YOCTO 2について
RolandのTR-808は1980年に発売されて以来、現在でも高く評価されているリズムマシンです。
まだデジタル全盛期になる前の1970年代後半に開発しているため、サンプリング技術で必要なメモリチップは当時高価であり現実的ではなかったことから、ほとんどアナログ回路で構成されたドラムマシンとなっています。
完全アナログ回路でドラムサウンドを再現することに専念した設計になっているので、今のデジタル式リズムマシンとは違ってアナログ特有の“ゆらぎ”があることがこのTR-808というリズムマシンが現在でも人気がある大きな要因になっています。
このTR-808をDIYで自作できるキットがあり、e-licktronicが提供している「YOCTO 2」というものがあります。前身のYOCTOはオリジナルのTR-808を大体忠実に再現したものですが、YOCTO 2の方はそれにプラスしてパーカッションシンセサイザー Boss PC-2の音源が搭載されています。
YOCTO 2のスペックは以下の通りです。
- Roland TR-808とBoss PC-2 Percussion Synthesizerから複製された12のアナログ音源
- 1~16ステップ 128リズムパターン
- 999小節 16トラック
- SH101シーケンサースタイルのような99ノートを保存できるパターンごとの1つの外部インストゥルメントトラック
- MIDIキーボードモードでは、外部MIDEデバイスを再生可能
- 音源ごとにマルチアウト
- BD, SD, LT, MT, HT, HC, CHの個別アクセント
- トータルアクセントトラック
- マスター出力 (L/R モノ)
- テンポ 30-250 BPM
- 7つのシャッフルレベル
- 4つのスケール(1/8t, 1/16, 1/16t, 1/32)
- 4つのシーケンサー方向(順方向、逆方向、ピンポン、ランダム)
- 簡単なコピー&ペースト機能
- パターン全体または個別に左または右にシフト
- IN/OUT/Thru MIDI
- DIN Sync 2ms +5V
- And More…
YOCTO 2のDIYキットは現時点(2020/04/01)ではこちらから購入することは可能です。
また、YOCTO 2の操作マニュアルはこちらからダウンロード可能です。
YOCTO 2はオープンソースハードウェアなので、回路図もこちらから入手可能です。
部品について
電子部品リストはこちらからダウンロードすることができます。
MOUSERでYOCTO 2のBOMがありますので、必要な電子部品を一括購入することも可能です。
電子部品を購入する時は、予算が許す限り必要数プラスアルファで予備品も含め購入しておくことをオススメします。
特にIC系は間違って逆挿入してしまい電源を入れた途端にオジャンにしてしまったことがあるので、予備があると安心します。
BOMにリストされているデータエンコーダーはステップが細かく移動せず2, 3またはそれ以上のステップで変化するため、こちらのPEC16-4020F-S0024を購入しておくとよいでしょう。
その他には電源アダプタを購入する時に気を付けてほしいのは、DC15VのACアダプタを間違って購入しないようにして下さい。
YOCTO 2で使用可能なACアダプタはAC100V-15VAC(1A以上)であり、出力側も15Vの交流が必要になります。この手のACアダプタはなかなか入手が難しく、国内ではデンシ電気店から購入することが可能です。
YOCTO 2専用のケースもあって、erica synthsから購入可能なので、ケース有り無しでは完成した時の達成感も違うのでぜひ入手しておきましょう。
製作について
YOCTO 2の組み立てのガイドについては、基本的にこちらのアセンブリガイドに従って、製作していけばよいでしょう。
YOCTO 2の部品数は多く、はんだ付けする時も基板上から部品番号を目視で探し出すのも一苦労します。
そこでYOCTO 2 PCBのBRDファイルをダウンロードし、EAGLEというソフトを使用して、このソフトで部品番号を検索するとその部品番号が基板上のどの辺にあるのか確認できるようになり作業効率があがるのでオススメします。
最初に電源周り、I/O周りとはんだ付けしていきますが、ケーブルの作成のところで少々面倒が入ってくる感じになります。
ケーブルの銅線にコンタクトをかしめる必要があるので、圧着工具も準備しておきましょう。圧着工具は慣れないと失敗するので練習用も含めてコンタクトは多めに購入しておくとよいです。
オーディオメインアウト用ケーブルはシールド付きの2線ケーブルが必要になってきますので、なるべく取り回しが良いケーブルを購入しておくとよいでしょう。
次にメインボードに入るのですが、先に音声をトリガーするのに必要な部分をはんだ付けしていきます。
なぜこのようにするかというとYOCTO 2はかなりの部品数があり一気にはんだ付けしてから動作を確認すると、正常に動作しなかった時に不具合がある箇所の当たりを付けるのが結構大変になります。
なので、例えばキック音源部をはんだ付けしたらそこで一旦トリガー信号を出して、音が正常に出力できたら次にスネア音源部をはんだ付けしていくという流れを繰り返していき完成させていくとあまり混乱がありません。
こういうやり方だと、一番先にキック音源部を完成させ、トリガー信号を出力した時にあのTR-808のキック音が聴こえてくるとかなりモチベーションが上がってくるので(笑)、結構大変なハンダ付けもあまり苦にならなくなりますよ。
DIP IC系の部品は直接基板にはんだ付けするのではなく、DIP ICソケットを用意しておいてそれをはんだ付けしておけば、もし失敗しても直ぐ取り外し取り付けが容易になります。
自分がひとつハマったのが、データエンコーダーを回してもコントロールが効かないということがあって、原因が良く分からずあれこれ試行錯誤した後、CPUのファームウェアをAtmel-ICEを使用して上書きしたら動くようになった経緯があるので、もし同じ不具合でハマったらファームウェアを上書きしてみるのも1つの手です。
I/O基板、メイン基板のはんだ付けが終わったら、基板間のケーブルをすべて接続して最終チェックです。
動作チェックして問題がなかったら、ケースに入れツマミを取り付けて完成です。
TR-808とYOCTO2の違いについて
前にも言いましたが、YOCTOはTR-808と音源数は同じ形になっていますが、YOCTO 2の方はパーカッションシンセサイザー Boss PC-2の音源が1つ搭載される形になっています(筐体一番右端の6個ツマミが付いている箇所がそうです)。
また、YOCTO 2のシーケンサ部はオリジナルとは違い、e-licktronicが提供しているオリジナルのシーケンサとなっており、少し扱いやすくなっています。 (シーケンサ部のソースコードは非公開のようです。)