NAVAについて
RolandのTR-909は80年代後半の1983~1984年にかけて10,000台製造されたリズムマシンです。
Roland TR-808の後継機種であり、MIDI規格への対応やシーケンサーで様々な機能が追加された内容になっていました。
発売当時は20万円近くと高価で、デジタル移行期でもあったことからあまり人気が出なかったようです。
TR-909はバスドラムやスネア、タムなどの皮モノ系の音はアナログ回路でシミュレートし、ハイハットやシンバルなどの金属系の音は6bitサンプリングのPCM方式を採用していました。
このアナログからデジタルへの移行期に出てきたことが幸いしたのか、リアルティには欠けるものの音色として特徴のある音が、テクノやハウスにマッチしたことから後になって高い評価を受け、今(2020年)でも中古では高額で取引されている状況です。
このTR-909を再現したDIYキットは様々ありますが、そのひとつにe-licktronicが提供している「NAVA」があります。
NAVAのスペックは以下の通りです。
- 1~16ステップ 128リズムパターン
- 999小節 16トラック
- SH-101シーケンサースタイルのような99ノートを保存できるパターンごとの1つの外部インストゥルメントトラック
- MIDIキーボードモードでは、外部MIDEデバイスを再生可能
- 音源ごとにマルチアウト
- BD, SD, LT, MT, HT, HC, CHの個別アクセント
- トータルアクセントトラック
- マスター出力 (L/R モノ)
- テンポ 30-250 BPM
- 7つのシャッフルレベル
- 4つのスケール(1/8t, 1/16, 1/16t, 1/32)
- 4つのシーケンサー方向(順方向、逆方向、ピンポン、ランダム)
- 簡単なコピー&ペースト機能
- パターン全体または個別に左または右にシフト
- IN/OUT/Thru MIDI
- DIN Sync 2ms +5V
- And More…
NAVAのDIYキットは現時点(2020/05/04)ではこちらから購入可能ですが、e- licktronicによるとレア部品の入手性も段々と困難になってきているようで、在庫限りでもう次のロットは生産しないとアナウンスしていました。
NAVAの操作マニュアルはこちらからダウンロードできます。
また、NAVAもYOCTO 2と同様にオープンハードウェアのため、回路図もこちらから入手可能です。
部品について
電子部品リストはこちらからダウンロード可能ですが、自分で調べて購入するのが面倒であればMOUSERからNAVA用のBOMがあるのでこちらから一括で購入可能です。
電子部品は何かあった時用に、要求数より少し多め(特にIC系)に購入しておくとよいです。
一部入手出来ない部品があったりするので、この場合はフォーラムを参照すると代替品が載っていたりするので都度確認して購入しておきます。
YOCTO 2と同様に電源アダプタはAC100V-15VAC(1A以上)と15Vの交流出力が必要なので、間違って通常の15Vの直流出力のACアダプタを購入しないようにしてください。
ACアダプタはこちらから購入可能です。
NAVA専用のケースもerika synthsが扱っているのでこちらから入手しておきましょう。
製作について
NAVAの組み立てガイドはWebベースとなりますが、こちらに従って、製作していきます。
ここで気を付けたいのは、Webベースの写真や部品リストはVer1.0ベースの回路基板となっていて改善が加えられた最新のVer1.02の回路基板とは一部違う部分が出てきたりします。迷ったらVer1.02の部品番号と最新の電子部品リストを信じてアセンブリしていってください。
NAVAも部品点数が多いため、基板上から部品番号を探すのも大変なので、BRDファイルをダウンロードし、EAGLEというソフトを使用して検索確認すると手間が省けます。
ただ、このBRDファイルもVer1.0ベースのようなので検索しても引っ掛からなかったり、検索位置も違っているようでしたら、Ver.1.02の基板から素直に探すしかありません。
Web上のガイドでは上から順番にPower supply、Noize・・・と製作していく流れになっていますが、最初はPower supplyとIO Boardを先に終わらせておいてください(理由は後述)。
電源I/O周り、ケーブル銅線のコンタクトかしめやオーディオメインアウト用のケーブルについてはYOCTO 2と同じ要領なので、YOCT 2製作メモが参考になると思います。
メイン基板に入ったら先にSequencerとMasterの部分を先に実装しておくとよいです。
製作順番の入れ替えですが、ガイドに従って実装していくとIO Boardの段階でやっと出音が確認できるようになるため、かなり部品を実装した後になってしまいます。
自分の考えとしては部品を全部実装してから出音を確認すると、音が出なかった場合にトラブルシュートが大変になるため、例えばBass Drumのセクションを終えたらSequencerセクションからトリガー信号を出し、きちんとBass Drumの音が出力されているか確認してから次のSnare Drumのセクションに入ってはまた出力音を確認していくというやり方のほうが、混乱がなくていいと思います。
何よりも製作途中でTR-909の「アノ音」を確認しながら、はんだ付けしていった方が途中で心が折れなくなりますよ。
後、自分が少しハマったのがCPUのファームウェアを書き込む時にAtmel-ICEを使用するのですが、この時接続するコネクタのピンアサインとNAVA メイン基板上のコネクタピンアサインが微妙に違っていて、なぜCPUが認識しないの?と悩む羽目になりました。
注:DIYキットに含まれるCPUはあらかじめファームウェアは書込み済みです。なので、ファームウェアの書込み方がわからないという方は安心ください。今回は理由があってファームウェアを更新しました。
通常スタンダードなコネクタのピンアサインは決まっているものですが、NAVA(YOCTO 2は大丈夫)は違っていたようでジャンパー線などを使って中継して入れ替え接続しました。
I/O基板、メイン基板のはんだ付けが終えたら、基板間のケーブルを接続して最終チェックします。
動作チェック後、問題がないようでしたら最後にケースに入れます。
<2020.5.5 追記>:NAVAの細かい部分についてはgou2goさんのサイトがよくまとめられていらっしゃるのでこちらも参考になると思います。 snareの音がマニュアル通りだとオリジナルと違和感があったりして、ジャンパー抵抗を付けるとそれっぽくなったとかフォーラムとにらめっこしながらじゃないと分からない部分も書いてあります。
TR-909とNAVAの違いについて
NAVAのシーケンサー部分は、SH101シーケンサースタイルを取り入れたりとオリジナルのTR-909にはないシーケンサー機能があります。
出音に関してはオリジナルと比較したわけではありませんが、動画でオリジナルのTR-909と比較した限りにおいては、それほど違いはないと思っています。
あるとしたら部品違いや経年劣化による微妙な違いなのですが、これはオリジナルのTR-909同士でもあり得ることなので難しいところですが、最終的には聞く人のフィーリングの違いになるような気がしています。