RE-303 製作メモ

DIY シンセサイザー

RE-303について

RolandのTB-303は、ベース音色に特化しシーケンサも内蔵されたコンパクトなベースマシンとして1982年に発売されましたが、実際に人気が出たのは1980年代後半以降でした。

Roland TB-303

中古市場では今になってもまだ高値で取引されていて、一方でRoland含め各メーカーがこぞってTB-303クローンマシンを販売している始末です。

そいった状況の中、DIYの世界でもTB-303の“あの音”がほしいということで、各自がネット上に出回っているTB-303マシンの内部情報をリバースエンジニアリングして回路基板を起こし、電子部品を実装し、果てにはケースまでもDIYしてしまう強者もいます。

様々なクローンがある中で、Adafruit Industriesのオープンソースハードウェアである“x0xb0x”というクローン(DIYも可能)が有名ですが、海外のDIYシリーズのひとつに「クローンではないレプリカである」という話で有名なDin SyncのRE-303があります。

今回このRE-303を製作してみたので、今後DIYにチャレンジしてみたいという方のためにメモを残しておきます。

備忘録として残そうと思ったのですが、すでにjunさんという方が、RE-303製作記という分かりやすい記事を書いていらっしゃったので、自分は補足的な観点で書こうと思います。

基板やレア部品の購入について

このような昔のマシンのクローンを製作するにあたって壁になるのは生産中止品の電子部品をどうやって調達するかに悩むはずです。

良心的にも本家Din SyncのWebショップは生基板のみならずレア部品もセットで購入することは可能ですが、自分の場合はgizm0xさん経由から購入しました。Webでは公開されていませんが、メールベースで問い合わせして今回は特別に入手することができました(現在は取り扱い停止中だそうです)。

当時購入した時の価格内訳は以下の通りでした。
・RE-303レア部品キット(ケース無し)
 抵抗器や電解コンデンサなどマルツなどで購入できる部品は省略
・RE-303フルキット(ケース無し)
 全て部品を含むキット
・RE-303完成品(ケース無し)

自分の場合は、抵抗器や電解コンデンサの調達が、この時は何となく面倒くさかったのでRE-303フルキットを購入しました、、、

また、gizm0xさん経由では今はなかなか入手が困難なレア部品のひとつであるVCAチップ“BA662”を1個(今は1万円程度で取引されている)オマケで付けてもらえました!

さらに、お気づきかと思いますが、どれもケース無しの状態でした。やはりDIYだけでなくRE-303を音楽制作でも使いこなしたいと思うと、基板むき出しの状態よりもケースに入っていた方がモチベーションも上がるし、操作もし易くなるはずです。

そこで、何とかケースも調達できないかとWebで探してみたものの、なかなか見つからず、あったとしてもkumptronics.comのようにSold Outしていることがほとんどでした(junさんによるとケースの在庫はない場合でも問い合わせると販売してくれるそうです)。自分の場合は、ヤフオクで運よく入手することでできました!

電子部品について

gizm0xさんによると、オリジナルTB-303は(同年代のアナログシンセもだいたいそうであるように)カーボン抵抗器を使っていますが、金属皮膜抵抗器の方が温度特性や雑音性能が良くなるようで、gizm0xさん製作の0x0b0xの音源部はすべて金属皮膜抵抗器を使っているそうです。

また、VCOセクションの中で抵抗器(R74 – R90)を0.1%精度の超精密抵抗に変えるだけで相対ピッチが良くなります。オリジナルは人力で選別していたようで、今の時代では少々値段が高いですが0.1%精度の抵抗器(例 メーカー:Vishay / Dale メーカー型番:CMF55200K00BHEB)がありますので、これを使えば面倒な選別はいらなくなります。

電解コンデンサですが、オーディオ用(例:ニチコンのUKTシリーズ)を使用すると音の輪郭がハッキリします。ハッキリさせるとエフェクターのノリ(特にディストーション)が良くなります。オリジナル303は経年劣化でボケた感じの個体が多いらしいので、そのへんは好みが分かれるところですね。ちなみに信号の経路(カップリングコンデンサ)にしか効果はありません。

電解コンデンサには値段がピンからキリまであるので、DIYできる人は色々と試してみるのも楽しみのひとつではないでしょうか。

いずれにしてもアナログ回路なので個体によって微妙に音が異なります。これはオリジナルでも同じで、自分は聞き比べたことはありませんがそれぞれ微妙に音が違うそうです。

製作について

細かい工程については、junさんのRE-303製作記や本家のビルドガイドを参照ください。ここではざっくりと製作工程を載せておきます。

VCOセクション

上の写真は最初に電源セクション、次にVCOセクションまでの実装を終わらせ波形をチェックしているところです。電子部品のハンダ付けは最初に背が低い部品から実装していって最後に背の高い部品を実装していったほうがやり易いと思います。自分の場合はおおまかに抵抗器→ダイオード→トランジスタ→コンデンサ→ICという順にハンダ付けしていきました。

VCOセクションでは最後に下図のような方形波とノコギリ波が確認できればOKです。

VCFセクション

上の写真はVCFセクションを終わらせた段階のもので、フィルターを通した後の波形確認をしているところです。下図のように、VCFを通ったあとのノコギリ波の波形が共振している様子が確認できます。

VCAセクション

VCAセクションまでを実装し終わった時点の写真は以下の通りです。

gizm0xさんからオマケで付けてもらったVCAチップBA662をこのセクションで実装しています。

デジタルセクション

デジタルセクションは別のサブ基板に主にボタン操作をするための部品を実装するところです。下の写真のようにメイン基板とケーブルで接続して、ボタン操作した時のロジックをメイン基板にあるCPU基板に橋渡ししている仕組みになっています。

サブ基板に記載されているトランジスタのシルクマークは少々分かりにくいので、逆に実装しないように要注意です。自分は逆に実装してボタンが効かなくなるとうミスをしました。

下の写真はヤフオクから入手したケースのトップパネルを取り付けてみたところです。段々とモチベーションが上がってきますね。

最後に自分が一番苦労したのはDINコネクタの削りでした。現在一般的に売られているDINコネクタは次のようなものがほとんどだと思います。

コネクタの角を、ミニルーターなどを使用して次のような感じに削らないとケースに収まらないことになります。

ミニルーターは次のようなものを使用しましたが、きちんと固定してやらないと回転の勢いで滑ってしまって案外苦戦しました。

結構面倒なので、DIN Syncによる同期をやらないよという方は飛ばしてしまっていいかもしれません。RE-303ではMIDIコネクタがIN,OUTがあるのでMIDIによる同期が可能です。

RE-303とx0xb0xの違いについて

RE-303は全くのレプリカで、基板はTB-303の保守にも使えるデッドコピーです。CPU(SONIC POTIONS製)部分とファームウェアが違います。

最近では、Pixiepowered RE-CPUというものがあり、これはD650CエミュレーターでオリジナルRolandマシンからのマスクRomファームウェアを実行可能です。

一方、x0xb0xは音源回路がデッドコピーで、部品も同じものが実装可能となっています。但しCPUや操作系が違います。

x0xb0x is Copyright (c) Limor Fried & Adafruit Industries

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